クリニック開業における物件選びのヒント

クリニックを開業するということは、ドクターが経営者になるということです。もっとも重要なのは、多くの患者さんが来てくれるかどうかでしょう。クリニック開業の成功につながる物件選びは、慎重に行なわなければなりません。

クリニック開業のために選ぶべき物件の特徴

場所の条件

当たり前の話ですが、予定している診療科の患者さんが集まる場所を選ばなければなりません。開業地の選択は最大のポイントです。物件を選ぶ前に、開業エリアの検討から始めましょう。

その際に注目することは、競合先が少ないこと、対象となる患者さんが多いまたは増加の見込みがあること、この2点です。気になるエリアは実際に現地を訪れ、環境を体感してみることも必要です。地元住民や不動産業者に話を聞くのもいいでしょう。

物件の条件

開業エリアが決まったら、次は物件探しです。クリニック開業に相応しい物件の条件は、まず患者さんにとってわかりやすい場所にあること、必要なスペースが確保されていること、医療機器が正常に稼働する電力や水回りが確保されていること、賃料が適切であることなどです。

前提としてこれらの条件を間違いなくクリアしているのは、新築のクリニックモールでしょう。そういう意味では安心なので、開業物件としてクリニックモールを検討するのはおすすめです。

また、クリニックに通院する患者さんは健康面の不安を抱えているので、アクセス性の良さや駐車場の確保、建物がバリアフリーでエレベーターがあることなどにも注目してください。

それぞれの目線で考えるクリニック開業する物件選びのポイント

立地条件で選ぶなら

クリニックの開業にあたっては、自身にゆかりのあるまちを選ぶドクターが多くいます。保険診療をメインにするなら、住宅地や大型ショッピングモール内なども重要な選択肢になるでしょう。美容外科などの自由診療なら遠方からの患者さんも多くなるので、ターミナル駅の周辺など商業エリアでの開業がおすすめです。

物件の形態で選ぶなら

クリニックの物件は大きく分けて戸建て、ビルテナント、クリニックモールの3つです。

戸建ては郊外や住宅街などで、地域のかかりつけ医を目指して開業する場合に選択される形態です。自己資金を注入して自宅を兼ねるケースのほか、地主にクリニックを建ててもらって賃貸で開業するリースバック方式などもあります。

ビルテナントの場合、駅前などアクセスの良い物件を選べば患者さんも増え、戸建てよりも賃料を抑えることができるでしょう。ただし、電力や水回りの問題などで借りられる物件が限られてしまうこともあります。

クリニックモールであれば開業に適した内装や設備が整っていますし、トイレや駐車場が共用なら経費的にもメリットがあります。調剤薬局も併設されていますし、同じモールに入っているクリニックと連携することで患者さんも集まりやすくなるでしょう。

診療科で選ぶなら

急速な高齢化社会の進行を背景に、整形外科ではリハビリテーションなどのニーズが高まっています。物件を探す場合、リハビリテーション機器を設置できるスペース確保やバリアフリー対応などがポイントになるでしょう。

小児科では親御さんも一緒に来院するので、広い待合スペースや駐車場、駐輪場が確保された物件が適しています。授乳室やおむつ交換スペースの確保も考えたいところです。お子さんが多い耳鼻咽喉科や皮膚科でも同じことがいえます。

近年開業が多くなっている精神科や心療内科などのメンタルクリニックは、患者さんの立場からすると通院しているところを見られたくないものです。人通りの少ないところや、逆に患者さんであることがわからないように出入りの多いビルなどを選ぶこともポイントです。

どんな物件でも診療圏調査は必須

クリニックの物件には一長一短ありますが、どんな物件を選ぶにしても、まずは診療圏調査を行なうことが重要です。まだ計画が具体的になっていなくても、コンサルティング会社に診療圏調査を依頼するのは可能です。むしろ、計画を具体的にするためにも診療圏調査を行なうべきだといえます。