こちらでは、自分以外の医師と共に開業したり経営したりすることによって得られる利点について、わかりやすく解説しています。注意点もあわせて紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
共同経営であれば、スタート時点から医師が揃っている状態になるわけですから、医師を新たに確保する必要を省けます。かつてよりも医師数が増加傾向にあるとはいえ、良い人材を見付けるのはそれほど容易ではないのが実情です。
また、もともと知り合いであった医師を連れてくることで「どのような医師なのか」「どういったスキルを身に付けているのか」「患者からの評判はどうか」「どのような人生設計をしているか」など、人物像についておおよその把握も済んでいる、というメリットもあります。
2名の医師でクリニックを運営するのであれば、同時に診療をおこなうことが可能になります。そのため、同じ診療時間内で診察できる患者さんの数も増加します。そうなれば、おのずと売り上げアップにつながるわけです。あるいは、異なる時間帯を担当する方法にすれば、診療時間を無理なく長くすることが可能になります。
クリニックが経営不能になってしまうリスクをおさえやすくなることも、共同経営にすることで得られる大きなメリットのひとつです。たとえば、たった一人でクリニックをまわしている場合、もし自分が体調不良や病気になって業務をおこなえない状態になると、クリニックの診療を一時的にストップせざるを得なくなります。そんなとき、医師がもう一人いれば、そういった事態を回避しやすくなります。
単独経営をするよりも、2人でクリニックを経営していく場合のほうが、より客観的な視点からさまざまな判断をくだしやすくなります。ひとりきりだと、どうしても主観が強くなりすぎて視野が狭くなってしまうので、経営の健全性を維持していく上でのマイナス要素になりがちなのです。
また、コネクションも1人分から2人分へと広がります。より広いコネクションを得ることも、クリニック経営においては重要なポイントです。
クリニック開業時は、ほとんどのケースにおいて「個人事業主」になります。この点は、デメリットのひとつです。というのも、各種契約の締結や事業所得の確定申告など、全て事業主「個人」となってしまうからです。社員総会などで決定した役員報酬をそれぞれが得て、各契約の主体は「法人」となる医療法人の場合と比較すると、どちらか一方の医師が負う責任が圧倒的に大きくなりがちなのです。
「そうであれば医療法人を設立すればよいのでは」という考えが浮かびますが、設立はそれほど簡単ではありません。各都道府県などで年に2回開催される医療審議会で認められなければならないからです。認められるための条件には、個人クリニックでの実績も含まれているので、開業時点での医療法人開設は、かなり難易度が高いといえます。
共同経営者と自分との間で、クリニックの方針に違いが生じ、それが大きな問題へと発展してしまうことがあります。ひどい場合には、話し合いがまとまらず、クリニック内に派閥ができたり分裂したりしてしまう可能性も考えられます。そうなると、経営についての意思決定が遅れてしまうなど、さまざまな支障が生じてきます。
仕事量のバランスが崩れることによる不満が生じる可能性があります。どちらか一方の負担があまりに大きくなると、仕事量が多すぎることに対する不満が生じます。休暇の取得が難しくなるなどの状態が続けば、人間関係の悪化へと発展してしまいかねません。
ここでは、3人の医師がクリニックを共同経営するケースを想定して解説していきます。
全員がフラットな関係でいるのか、それとも1人がイニシアチブを握るのか、といった役割分担だけでなく、売り上げの分配や融資・出資といった金銭面など、あらかじめ明確にしておくべき事項は多数あります。
レセコンに売り上げを入力するときに、担当医師を選んで入力した上で、3人のそれぞれの売上割合を算出します。また、経費については、大きくふたつに分けられます。ひとつは「看護師・医療事務・診察室など共有するもの」。そしてもうひとつは、「PT・技師・検査機器などそれぞれの使用頻度が異なるもの」です。
・共有するものについては、「看護師・医療事務の給与+家賃÷医師の人数=それぞれの医師の負担経費」
・使用頻度が異なるものについては「PT・技師の給与+検査機器÷使用頻度=それぞれの医師の負担経費」
上述の式で算出した経費を集計し、クリニックのトータルの経費から医師ごとの経費負担率を計算します。
それぞれの医師の売上から経費を差し引いた数字を「クリニックへの貢献度」とし、売上の分配方法を総会などで決定していく流れになります。
融資を受ける場合には、1人が院長候補として融資を受けて残り2人の医師がその連帯保証人となるケースのほか、3人がそれぞれ融資を受けるケースなどもあります。出資についても同様で、院長候補が多めに出資をするケースもあれば、3人が平等に出資するケースもあります。
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