クリニック開業の準備を進める中で、「看護師は何人採用すればよいのか」と頭を悩ませるドクターは少なくありません。看護師の配置人数を見誤ると、人件費が経営を圧迫したり、逆にスタッフ不足で現場が混乱したりと、開業直後から深刻な問題に直面するリスクがあります。
本記事では、診療科ごとの看護師採用人数の目安や、自院の計画に基づいた適正人数の算出手順、さらには採用にまつわる失敗事例とリスク対策まで解説します。無駄のない人員計画を立てるための判断材料として、ぜひご活用ください。
看護師の必要人数は、すべてのクリニックで一律ではありません。診療科の特性や患者さんへの処置頻度によって、求められるマンパワーは大きく異なります。ここでは、主な診療科ごとの標準的な採用人数と、適した雇用形態について見ていきましょう。
※医療法上の看護師配置基準では、患者30人につき、看護師または准看護師を1人以上配置することが定められています。
内科や小児科など、採血・点滴・ワクチン接種・問診といった処置業務が多い診療科では、看護師への依存度が高くなります。1日あたり40〜60人程度の患者数を想定する場合、常勤看護師1〜2名に加え、パート(非常勤)2〜3名を確保するのが一般的な目安です。
特にインフルエンザの予防接種シーズンや花粉症の時期など、季節変動が大きい診療科では、繁忙期に対応できるパートスタッフの確保が重要になります。ピークタイムに処置が滞ると患者さんの待ち時間が長くなり、満足度の低下にもつながりかねません。
整形外科や皮膚科、眼科などでは、診察補助や検査対応が主な業務となり、処置中心の診療科に比べると看護師の業務負担は軽減される傾向にあります。常勤1名+パート1〜2名を基本とし、医療事務スタッフとの兼任や連携で効率的なオペレーションを組むことが可能です。
ただし、整形外科ではリハビリ補助、皮膚科ではレーザー処置の介助など、診療科特有の業務が発生する場合もあります。自院で提供する診療内容を具体的に洗い出したうえで、必要人数を判断することが大切です。
開業時に看護師を全員常勤で採用すると、固定費が大きくなり経営の柔軟性が失われます。「常勤1〜2名+パート複数名」という構成が、シフトの柔軟性と人件費抑制を両立する黄金比率といえるでしょう。
常勤スタッフにはクリニックの運営を支える中核メンバーとしての役割を担ってもらい、パートスタッフで曜日や時間帯ごとの患者数の波に対応する体制を整えるのが理想的です。
他院の事例をそのまま真似するのではなく、自院の経営計画に基づいてロジカルに必要人数を導き出すことが重要です。ここでは、適正人数を判断するための3つの客観的指標を紹介します。
まずは、事業計画における1日の目標患者数をもとに必要人員を算出します。具体的には、目標患者数×1人あたりの処置・対応時間÷診療時間で、ピークタイムに必要な看護師数をシミュレーションできます。
たとえば1日50人の患者数を想定し、看護師1人あたり15分の対応が必要な場合、午前診だけで約6時間分の看護業務が発生します。診察室の数や受付からの導線も考慮し、同時に何名のスタッフが必要かを具体的に割り出しましょう。
事前問診やカルテの代行入力、患者さんへの生活指導など、どこまでを看護師に任せるかによって必要人数は変動します。タスクシフトの範囲を明確にすることが、過不足のない人員配置の第一歩です。医師が自ら行う業務と看護師に委任する業務を事前に整理しておきましょう。
クリニック経営において、看護師・医療事務を含めたスタッフの人件費率は、一般的に医業収入の15〜20%程度が適正な目安とされています(※人件費率の目安は経営コンサルティング各社の公表データに基づく一般的な指標であり、診療科や地域により異なります)。
この水準を大きく超える採用計画は、経営を圧迫するリスクがあります。開業後の収入予測と照らし合わせ、人件費の上限ラインを設定したうえで採用人数を決定しましょう。
人員計画の甘さは、開業後に想定外のトラブルを引き起こす原因になります。ここでは、よくある失敗パターンとその対策を具体的に解説します。
看護師を多く採用しすぎた場合、開業直後の患者数がまだ少ない段階で人件費が重くのしかかり、経営赤字に陥るリスクがあります。一方で少なすぎると、一人ひとりの業務負荷が過大になり、残業の常態化やスタッフの疲弊を招きます。
結果として早期離職が発生する、いわゆる「開業ショック」に見舞われるケースも珍しくありません。開業時は必要最小限の人数でスタートし、患者数の増加に応じて段階的に増員する計画が現実的です。
看護師の採用活動は、開業予定日の3〜4ヶ月前には開始するのが望ましいとされています。応募から面接、内定、入職までにはある程度の期間が必要であり、内定辞退が発生する可能性も考慮しなければなりません。
また、開業直前には1〜2週間程度の研修期間を確保し、電子カルテの操作や院内の動線、診療の流れを事前に共有しておくことが、スムーズな開院につながります。
開業初期は慣れない環境でスタッフにもストレスがかかりやすく、急な欠勤や退職が発生するリスクがあります。万が一に備え、看護師のスポット派遣や人材紹介会社とのパイプをあらかじめ確保しておくことが重要です。
さらに、シフトには予備の余裕を持たせ、1名が欠けても診療に支障が出ない体制を意識しておきましょう。こうしたリスク管理の準備が、安定した開業スタートを支えます。
クリニック開業時の看護師採用人数は、診療科の特性・想定患者数・業務範囲・人件費率という複数の要素から総合的に判断する必要があります。感覚や他院の模倣ではなく、自院の経営計画に基づいた綿密な人員計画を立てることが、人件費と業務効率のバランスがとれた安定経営の土台になります。
開業という大きな一歩を、自信を持って踏み出すために。信頼できるコンサルタントとともに、過不足のない採用計画を作り上げていきましょう。
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