このページでは、ドクターハラスメントについて、定義や法律上の問題、生じる原因、そして加害者にならないようにするために講じるべき対策などを紹介していきます。
医師などが患者に対して行う嫌がらせや無神経な言動のことを、ドクターハラスメントといいます。略してドクハラと表現されることもあります。例えば、患者に対する「日頃の行いが悪いから病気になったのです」といった発言などです。ただし、これほどまでには無神経な内容でなかったとしても、患者が不安や不快さを感じる言動は、広くドクハラであるとされてしまう可能性があります。
患者に対する正当な医療行為や必要な指示などに関しては、民事・刑事のいずれにおいても責任が問われることはありません。実際、医療それ自体がもともと大きなリスクを伴うものです。そのため、緊急時などの止むを得ない場合などは特に、責任を追及される可能性は低くなります。
では、どのようなケースにおいてドクハラが問題になりうるのでしょうか。それは、医療上必要であるとされる範囲を逸脱した悪質なケースです。必要性の限度を超え、患者の心にトラウマを残すような言動をしてしまうと、トラブルへと発展する可能性があります。
患者が安心したり嬉しく感じたりする内容の話を伝える場合には問題なくても、不安を感じさせる要素を含む内容であれば、伝え方を間違うと、それがドクハラの原因になってしまうおそれがあります。
基本的に患者は、健康上になんらかの問題や不安を抱えて診療を受けているわけです。一方、知識量に圧倒的な差がある医師は、病名や病状などについて、患者にとって厳しい内容であったとしても伝える義務を負って診療をおこなっています。両者は、このような特殊な関係性にあるため、伝え方が重要なポイントになるのです。他意はなくとも、ちょっとしたことが患者の心にダメージを与えてしまう可能性があります。
患者が過度な期待を抱いている場合も、ドクハラが生じるリスクが高まります。たとえば「じっくりと話に耳を傾けてもらえるだろう」「優しくていねいに対応してもらえるだろう」と考えて病院まで足を運んでも、それがかなえられないと、患者は不満を覚えてしまうものです。
医師が限られた時間内で診察をこなしていく必要に迫られつつ、それでもできる限りしっかりと対応していた場合であってもです。
患者にとって、医師の発言は時として常に重いものになり得ることを、改めて自覚するようにしましょう。深刻な内容を伝えなくてはならない場合には特に、慎重に言葉を選び、患者が少しでも前向きな気持ちになれるように工夫することが大切です。
たとえば「手術をしなければ治りません」よりも「手術で改善する可能性があります」のほうが患者の不安感を抑えやすくなるはずです。
患者の人柄や価値観、家族構成、生活環境などは、一人ひとり異なります。ですから、可能な限りそういった側面を大切に捉え、さらに現在の心情を慮った上で、ベストであると考えられる治療方法の提案を行うことが大切です。
長期間にわたり通院を続けている患者に対しては、まるで家族や親戚に対して覚える親近感のような感覚を持つ場合があります。
親近感自体は悪いものではないですが、あまりに距離が近くなりすぎると、つい遠慮がなくなり、言葉がきつめになってしまうことがあります。思わぬ失言などをしてしまうと、のちのちトラブルに発展するリスクもあります。「親しき中にも礼儀あり」を意識し、お互いに対する礼節を守っていくことが重要です。
患者のなかには、心ない罵詈雑言などを浴びせてくる人もいます。そのような場合「そこまで言われる筋合いはない」と答えたくなるのはごく自然な感情です。けれども、そのような場合であっても医師としては、感情をコントロールし、冷静さを保って対応することが求められます。
患者に対するきめこまやかな心遣いは大切ですが、とはいえ、ドクハラを気にし過ぎて必要な情報を患者に伝えないことも大問題です。立場は異なるものの、医師も患者も同じ人間同士であることには変わりありません。
ですから、患者一人ひとりの性格や考え方、家族の意向などをふまえた上で適切な言動をするよう心がけることで、ミスコミュニケーションを回避していけば、ドクハラであると思われてしまうリスクを抑えやすくなります。
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