クリニックの継承開業とは、すでに開業しているクリニックを譲り受けて開業することです。
クリニックを新たに開業しようとすると、土地の確保や建物の建設が必要です。他にも診療に必要な道具や医療機器などを揃えなくてはならず、高額な費用がかかります。さらに、スタッフの確保や集患にも時間やお金をかけなくてはなりません。
すでに開業しているクリニックを継承すれば、これらの問題を解決できるため、スピーディーな開業を実現できる可能性があります。
継承開業には、主に親子間で継承するケースと、第三者から譲り受けて開業するケースの2種類があります。
クリニックの継承開業で、最も多いのが親子間での継承です。開業した医師の子供が成長し、医師となって他の病院や医療機関で経験を積んだあと、親のクリニックで副院長などに就任し、最終的に親のあとを継ぐ形でクリニックを継承します。
ただ、2023年現在では子供にあとを継がせるクリニックは減少してきています。
親子や親族間でクリニックを継承するのではなく、外部の後継者候補を見つけて経営を譲るのが第三者継承です。
クリニックを経営している医師が高齢になるなど、何らかの理由で経営を続けられなくなったとき、後継者がいない場合ではクリニックの廃業を選択するのが一般的でした。
ただ、地方では医師不足が深刻的な問題となっています。国や地方自治体が第三者継承のサポートを積極的に行っていて、その効果もあり第三者に継承するケースが増えてきています。
クリニックを新規開業しようとすると、新たに土地や建物を探して契約するのはもちろん、医療機器や設備を導入したり新しく人員を確保したりする必要があり、多額の開業資金が必要です。
クリニックを継承開業すれば、土地や建物は新たに探す必要がありません。機器や設備は既存のものを利用できますし、人員も現在のスタッフをそのまま引き継げるため、設備や採用にかかる費用を抑えることができます。
また、すでに周囲に認知されているクリニックなので開業を告知するための広告費もかけずに済み、認知や集患のためのコストを最小限に抑えられます。
クリニックを継承開業すれば、新規開業の課題となる集患についてもクリアできます。長年、その土地で開業していたクリニックは、医師が変わるとはいえ、周辺の住民にとっては馴染みのある施設です。継承後の開業段階ですでに広く認知されており、ある程度の患者数を見込んでスタートを切ることができます。
既存の固定患者がいることによって収入の見通しも立てやすく、余分な運転資金を用意しなくても開業できる点が魅力です。
開業していたクリニックをそのまま引き継げるとは言え、継承によって診療する医師は変わります。医師が変わることで診療方針が異なるケースも珍しくなく、その違いから足が遠のいてしまう患者さんもいるでしょう。
また、前のクリニックから勤務していたスタッフとの関係づくりも重要です。患者さんと同じく、診療方針の違いから「働きにくい」と感じて離職を招く可能性があります。
患者さんに引き続き来院してもらう、スタッフに気持ちよく働き続けてもらうためにも、丁寧なやりとりやコミュニケーションを心がけ、患者とスタッフ双方からの信頼を得ることが大切です。
ここからは、クリニックを継承開業する際に気を付けておくべき点について解説します。継承開業を検討されている方は、事前にチェックしておくようにしてください。
継承開業の場合、内装や医療機器、設備・備品など既存のクリニックのものをそのまま引き継げるため、初期費用を最小限に抑えられます。一方で、建物の設計や内装は変わらないため、動線が使いにくいといった問題が考えられます。
また、バリアフリーではない、設備が老朽化しているなど、追加で改装や建て替え工事が必要な場合もあるでしょう。
コストを抑えるために継承開業を選択したのに、蓋を開けてみたら思った以上に費用がかかってしまうケースもあり、建物や設備の老朽化には注意が必要です。
継承前から働いていた医療スタッフは、地域や患者さんについて熟知しているため、引き続き雇用できれば即戦力となる心強い存在です。
とは言え、職場の人間関係は一筋縄ではいきません。相性もあるでしょうし、勤務時間や賃金など、雇用条件の見直しが必要になる場合もあります。
そのため、前クリニックからの医療スタッフ引き継ぎは、慎重に考えましょう。あらためて面接を行い、新しい診療方針について説明し理解や合意を得るなど、トラブルを防ぐ対策を必ず講じるようにしてください。
クリニックの継承開業では、事前にきちんと継承前クリニックの廃業理由を確認するようにしましょう。医師の高齢化や体力的な問題、後継者がいないケースでは特に継承に問題はありませんが、競合クリニックの台頭で経営難になった、スタッフや患者とトラブルが発生したといった理由なら注意が必要です。
廃業理由は継承後の経営にも大きく影響する可能性があるため、しっかりと確認した上で検討するようにしてください。
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